例えば、親から子供に金銭等を渡した場合は、「贈与税」の課税対象となります。
でも、お子さんを育てるための「生活費」や「教育費」はどうでしょうか?
もしこれらに税金がかかるのなら・・お子さんを育てること自体大変ですよね?
そこで、税法上は、「扶養義務者相互間」における「生活費」や「教育費」には税金がかからないことを定めています。
目次
1.扶養義務者相互間における生活費又は教育費
扶養義務者間において、通常必要となる「生活費」や「教育費」は非課税とされています。
生活費とは | その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用。治療費や養育費その他これらに準ずるものも含む。 |
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教育費とは | 被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等。義務教育費に限られず、高校や大学も含む。入学祝等の金員も、社会通念上相当と認められるものは、贈与税の課税対象とならない(Q4-1) |
通常必要な費用は、「社会通念上適当と認められる、一般的な常識の範囲内」という解釈となります(Q1-2)。
2.「扶養義務者」って誰?
では・・ここでいう「扶養義務者」は、誰のことを指すのでしょうか?
「扶養義務者」とは、以下の方を指します(Q1-1)。
① 配偶者
② 直系血族及び兄弟姉妹
③ 三親等内の親族(おじ、おば、おい、めいなど)で生計を一にする者
④ 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
●夫から奥さんへの生活費、祖父からお孫さんへの教育費などは、扶養義務者相互間のため税金がかかりません。お子さんが親の生活費を負担した場合も同様です。
●ただし、三親等内の親族の場合は、「生計を一」の要件が必要とされています。「生計を一」とは、同居の有無は問いませんが、財布が同じであることです。別居の場合は生活費等の仕送りが必要となります。
3.結婚・赤ちゃん関連
(1) 結婚式の費用は?(Q2-2)
結婚式などの費用を、そもそも誰が負担するか?は、状況によってさまざまです。状況によっては、親が負担すべき場合もあります。その場合は、そもそも贈与には当たらない=贈与税の課税対象となりません。
(2) 結婚後の生活資金は?(Q2-1)
結婚後に「通常の日常生活を営むため」に必要な家具や、購入するための金銭は、贈与税の対象となりません。ただし、贈与を受けた金額が「預貯金」となっている場合や、株式:家屋の購入費用などに充てられた場合は、生活費ではありませんので贈与税の課税対象となります。
(3) 出産費用・ベビー用品は?(Q3-1)
「生活費」には、「治療費」や「養育費」等も含まれます。例えば、検査・検診代、分娩・入院費などは、「治療費」に準ずる扱いとなり、贈与税の課税対象となりません。(保険等補てん分を除く)
また、新生児のためのベビー用品を購入するための金銭の贈与も、「通常の日常生活を営むために必要な費用」ですので、贈与税の課税対象となりません。
(4) 結婚のご祝儀や出産祝いは?(Q3-1)
個人から受ける、「結婚や出産などのお祝い金」は、「社会通念上相当と認められる」範囲であれば、贈与税の課税対象となりません。
4.子供の家賃等を親が負担した場合は?
家賃も「生活費」なので、原則、贈与税がかかりません。
ただし、あくまで、「社会通念上適当と認められる範囲」の家賃等です。
金額基準は特にありませんが、贈与者と受贈者の資力等を勘案して個別に判断します。
「通常の日常生活を営むのに必要な費用」であれば、当然に税金がかかりません(Q5-1)。
5.課税されるケース
(1)一括で支払った場合(Q1-3)
「生活費」や「教育費」として贈与税の対象とならないものは、必要な都度、直接贈与を行ったものが対象となります。
数年分の「生活費」や「教育費」を一括で贈与した場合は、原則的に贈与税がかかることになりますので、例えば、親が子供に大学4年間の生活費として一括で支払った場合などは×です。
一括で支払った場合、①預貯金で残っている部分②生活費や教育費に充てられなかった部分が、贈与税の対象となります。
なお、教育資金については、教育資金の一括贈与の非課税枠(租法第70条の2の2)の特例、結婚、子育て等資金については、結婚、子育て等資金の一括贈与の非課税枠(措置第70 条の2の3)の特例がありますので、こちらもご参照ください。
(2)高額の資金移動
例えば、夫婦間の口座移動でも、生活費を超えると判断されると、贈与税が課税されます。また、夫からの生活費で、生活費以外に流用した場合も贈与税が課税される可能性が高いです。
例えば、株などの金融資産を購入した場合などが該当します。
(3)高額なプレゼント
生活費は贈与税がかかりませんが、ぜいたく品には贈与税がかかります。
両者の区別は難しいですが。
例えば、結婚記念のお祝いに500万円のアクセサリーを贈った、高級車を奥様名義で旦那様が購入したなどは・・贈与税の課税対象になる可能性が高いです。
(4)妻の住宅ローンを夫が支払う場合
例えば、夫婦共有で不動産を購入した場合などで、奥様の収入がなくなったため、旦那様が支払うケースは贈与税が課税される可能性が高いです。
この場合は、賃貸のケースと異なり、不動産名義が夫婦共有のため、あくまで「妻の財産」に対する返済となり、扶養義務者間の生活費には該当しません。
(5)課税されないための証明
生活費や教育費としての贈与を、客観的に証明するためには、預金での振込履歴を残す、あるいは生活、教育用口座を、別口座として利用するやり方も考えられます。